小説

BLACK 第二話

1.白百合

 信仰。宗教。敬虔なる信徒。厳粛なる教義。
 この街にある、この街で最も巨大な建物。白亜の大聖堂。
 そこに集う人々。教義を仰ぎ、教義を敬い、教義に依る人々。
 それが日常の中で流れていく。朝に偶像を仰ぎ、昼に教父に懺悔し、夕に神に感謝する。それが日常として流れていく。

「―――――」

 早朝の教会は礼拝に訪れる人々で穏やかに賑わっていた。皆にこやかに笑いながら挨拶を交わし、感謝を述べ合いながら行き交っていく。
 そんな教会の庭を、ブラックは若い神父に導かれて歩いていた。彼が歩いている石畳の道は真っ直ぐに続き、ずっと先には墓石の立ち並ぶ共同墓地がある。
 朝陽よりも鮮やかな白い百合の花束を手に、喪服を着込んだブラックは真っ直ぐに墓地へと向かっていた。

「寒いな」

 なんとなしに、先へ行く神父の背中へ声をかける。
 今は九月の終わり。夏が終わって間もないというのに、頬に当たる風は痛い程冷たかった。

「―――――そうですね」

 神父は振り返らず、それだけを言って返した。
 予想通りの無愛想な返答に、ブラックは声を出さず苦笑を漏らした。
 もはや毎年の恒例となっている。この噛みあわないやりとりも。

「あの坊主な、助かったぞ」

 毎年こうしてこの日に、ブラックは墓参に訪れている。白百合の花束を手に、この神父に導かれ、冷たい風に吹かれながら。
 ブラックからの一方的な言葉の投げかけを続けながら、二人は蔓の絡んだ墓地の入り口(アーチ)をくぐる。

「―――――そうですか」

 神父に談笑するつもりは無いらしい。
 ここでブラックが諦めるのも例年通りだった。
 あとは二人とも無言で、真っ直ぐに目当ての墓石の前まで歩いていく。リリィ=ノーザンフォール。その名が刻まれた墓石へ向かって。


つづく

『BLACK』

 『 その闇こそが彼。
  ユダに匹敵する魔力を持ち、教会より異端と嫌忌されている闇色の魔術師 』

 第一話 異端の術士
  序幕 / / / / / / / / / / 終幕

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