私と、二度地獄を見た狗愛は、とある岩場の洞窟の前に立っていた。
「此処か?」
「ああ・・・」
どうやら此処がその[レグナルーク]と言う盗掘団のアジトらしい。
「・・・心の準備は?」
愛刀を見つめながら野暮なことを聞く狗愛。
「聞くなよ、分かってるだろ?」
私は面倒そうに言い返した。
「ふっ・・・よし、行くぞ!」
「OK!」
私達はその洞窟の中に足を踏み入れた・・・と、その途端。
「たぁぁぁっ!」
洞窟の奥の方からの声。
「来たぞ!」
「分かってる!」
私達は同時に剣を構える。
中から出てきたのは・・・・・・十四〜五人の男、
恐らくブレードアームズ使い。
「やはり・・・あの傷の付け方は剣しかないしな!」
狗愛は久々にこんな数の剣士と戦えるのが堪らなく嬉しいらしい。
まぁ・・・私も血が騒ぐのは同じなのだが。
「面倒だな・・・軽く蹴散らすか!」
「当たり前だ!」
「ナニ言ってんだお前等よぉ!十数人に二人でかなうと思ってん・・・
がぁ・・・」
その男が言い終わる前に私と狗愛の蹴りが顔面に命中する。
「「思ってるさ!」」
見事にハモって答えた私達だった。
「この天才剣士、狗愛の剣で逝ける事を有り難く思うんだな!」
「馬鹿野郎っ!死ぬのはお前だよ!」
一人の男が狗愛の真正面から突っ込む。
・・・無謀な。
「お前などこの程度で十分だよ!」
狗愛が剣を右上段から振り降ろし
左上段から振り降ろされた相手の剣と噛み合わせた。
その瞬間狗愛が素早く剣を引いた、相手の剣が右に大きく空振る。
そこを見逃す狗愛ではない、
あっさりと胴に一撃を決めてその男を葬った。
「なっ・・・ロイドがあんなに簡単に・・・こいつ、強いぞ!」
「今ごろ気付いたかっ!!!」
狗愛の剣はそう言った男が怯んでいる間に一閃。
うーん・・・確かに相変わらず強いなぁ。
「ニールまで・・・よくもっ!!!」
それに答えたのは私だった
「何人も殺しているのに仲間が死んだ位で・・・見苦しいよ!」
言い放って私の光剣が空を斬る。
するとその剣の刃から[光刃]が走り
[ニールまで・・・]とか何とか喚いていた男の上下の半身を分けた。
「くっ・・・みんな!束になっていくぞっ!!!」
「「おおっっ!!」」
妙に張り切って向かってくる男達。
・・・お前達、学習能力無いのか?
「狗愛、半分頼む」
「先にそれ以上やってしまうかもな!」
言って敵の中に飛び込む狗愛。
こいつも結構無鉄砲だなぁ・・・。
「はぁ・・・仕方無いな」
「まずはてめぇから血祭りにあげてやる!」
いつの間にか私を取り囲んでいる六人の男たち。
あっちが駄目でもこっちなら・・・と言う考えなのだろうか?
「血祭りか・・・なら、お前達を斬った方が盛大になりそうだな」
私の言葉が終わるや否や、男たちは有無を言わさず飛び掛かってきた。
・・・三流なら三流らしく・・・。
「何か吠えてから逝けよ!!!」
私は光剣を構えて最初の一人の太刀を防ぎ
そのまま相手の勢いを利用して飛びのく。
・・・案の定、対応しきれない何人かは
互いにぶつかったりしてそこらに倒れている。
「・・・!テ、テメェ!よくもルイスまで!!!」
良く見ると男の内の一人が他の男の剣に刺さって絶命している。
・・・そりゃあ自業自得と言うんだよ。
「やかましい!」
もうこんなコントにも飽きた私は、今度は自分から仕掛けに行った。
まず、一番近い男に上段から剣を振り降ろす。
・・・まだ甘いな。
男もさすがにそれは受け止めるが
次の鳩尾への肘打ちには対応しきれずに力が一瞬抜けた。
私はそこをすかさず光剣で斬り裂いた。
「・・・大したこと無いな」
「ひっ・・・イ・・・イムルさんまであっさりと・・・」
どうやら、その今斬った男は彼等の中でもかなりの男だったらしい。
か・・・格が低すぎるぞ、お前達。
「イムルだか居留守だか何だかしらないがとっとと全員斬らせてもらう!」
我ながら意味不明な事を喋りながら、バサバサと斬り倒す。
私が最後に七人目を斬った時、ちょうど狗愛も全員斬り倒した様だった。
「終わったな・・・」
私はやや憂鬱そうに呟いた。
「あぁ・・・そうだ」
狗愛が私の方に振り返る。
「お前、何人斬った?」
「ん・・・七人だな」
「よし!俺の方が一人多いぜ!」
お・・・お前なぁ・・・。
「しかし・・・この中にリーダーは居ないみたいだな」
私は周りを見渡して呟いた。
どうみてもどんぐりの背比べ、全員大したことは無い。
今相手をした中に突出した実力の持ち主は居なかった・・・
つまりはまだこいつ等のリーダーが居る可能性は高い、と言うこと。
「そうだな・・・こいつら、弱すぎる」
狗愛がぽそりと言う。
お前にかなう奴はそうは居ないだろう・・・。
「まぁ、とにかく奥に進んでみよう」
「そうだな・・・」
狗愛と私は剣の血を拭い、更に奥へと進んでいった。
中はほぼ一本道だったが、人が住んでいるにしては結構長かった。
十分程歩いた時、やっと奥から光が漏れてきた。
「この奥だな・・・」
狗愛が小さな声で呟く、私も小さく頷く。
・・・そこは大きな空洞になっていた。
篝火が沢山有り、空洞の隅から隅まで照らしている。
そして私達の目の前には一人の男の姿・・・。
・・・何故!?
私は、この日何度目かの衝撃を受けた。
私達の目の前にいたのは・・・。
「久しぶりだな、ケヴィン・・・」
男は暗闇の中から私に声を掛けてきた。
間違いなくそれは聞き覚えのある声だった。
「・・・アレク・・・」
「お前の知り合いか?」
私はゆっくりと頷き、そして静かに言った。
「あいつは・・・私の弟だ」
続く
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