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「……なんだか知らないが、むしょうに嫌な予感がする」
居住区を<彼女>を探しながらさ迷い、うろつく。
心当たりは、あらかた探した。
いないということは、背年にとって心当たりの無い、想像もしないようなところにいるということだ。
大抵、そんな時はろくでもないことを、やっていたりするから、始末が悪い。
「あとは……、そうだ教練場の方にいるかもしれない」
教練場……。
それは、ハンターズと呼ばれる武器携帯を許可された市民が、その技術を磨くために用意された施設のことだ。
射撃。
バーチャルを利用した戦闘訓練。
さらに一般的なトレーニング施設など、一般市民も利用できるものも存在し。
ハンターズはもちろん、一般市民の姿もおおくみられる。
あと、ハンターズの資格審査などもここで受けられる。
彼女もまた、よくここで体を動かしている。
まあ、大抵その時は、青年も誘う。
たぶん、彼女がここに一人で来たことはないだろう。
「ん……、あれは……」
見知った顔を見かけ、青年は小走りに駆け寄り肩を叩いた。
「よお、ひさしぶり今日は射撃訓練か?」
したしげに笑いかける。
「あ……、めずらしいなあんたが一人でここに来るなんてさ」
少年は、うかない顔に無理に笑顔を浮かべ青年を見上げる。
「……どうした。浮かない顔……」
をして……そういいかけて、青年は黙り込んだ。
聞かなくてもすぐに理由に思い当たったからだ。
元気出せよ、きっと親父さんは無事さ。
そんな、言葉が喉元まででかかるが、それが外に洩れることはなかった。
その言葉を口にすることは簡単だが、ただの慰めにしかならないことも事実だったからだ。
少年の父親は、パイオニア1の技術者。
当時幼かったその少年を残し、単身ラグオルに渡り、未開のラグオルを切り開いた。
あの、セントラルドームの爆発に巻き込まれた可能性は捨て切れない。
でも……。
「大丈夫、きっと親父さんは無事さ」
あえて、口にする。
「……同情なんていらねーよ……でも、ありがとう……」
照れくさそうに、顔を背けぼそっと言う。
その様をながめやりながら、青年はかすかに微笑するのだった。
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