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 「おじさん、こんにちは」
 「んあ?」
 パイオニア2総督府がある、中央区を間にはさみ、ちょうど対角線上に、軍管轄のブロックが存在した。
 そのあたりは、一般市民は立ち入りを禁止されており、随時入り口には、兵士が見張りを勤めている。
 ただ、パイオニア2の住人は、全員が全員、IDによって中央で集中管理されており。
 軍属でない一般IDの保持者が、ここに進入すれば、すぐさま探知されるシステムになっている。
 正直なところ、門衛はいてもいなくても、問題無いと言えば無いのだが、イタズラ心や、間違いで進入するものもいるので、威嚇の意味をこめて、とりあえず立っているといったところだ。
 さらにいいつのれば、この辺りはパイオニア2でも外れに位置するところで、見れるものといえば、ひまそうな門番と、立入禁止の入り口のみ、まず近づく一般市民はいない。
 その為、兵士のモラルも低く、いまいち仕事に身が入ってない。
 「ああ、こんにちは」
 兵士は挨拶をかえす。
 挨拶してきたのは、10代半くらいのニューマンの少女だ。
 金色の髪に壁玉の瞳の見目よい娘で、突然とはいえ、挨拶されて悪い気分ではない。
 「なんのようだい?ここは一般市民立ち入り禁止だ。こっから先に勝手にはいると、恐いおじさん達に追いかけ回されるぞ?」
 「ふーん、恐いねー」
 無邪気に笑い、小首を傾げる。
 「さ、おかえり。別にここにいても何もおもしろいことなんて無いぞ」
 そんな兵士の言葉はどこ吹く風、彼女は時間を気にするようにしきりに時計を気にしている。
 「ん?」
 兵士は少女をのぞき込み、そして……。
 「あ、ねこ」
 少女がふと、うれしそうに呟く。
 見ればちょうど猫が、広い広い目の前の広場を駆け抜けていくところだった。
 その姿を見送ってから兵士は、視線を少女に戻した……。
 だが、その時にはもう少女の姿はそこにはなかった。
 「あれ」
 きょろきょろと辺りを見回すが、少女の姿は、もう目の前から消え失せていた。
 「帰ったのか?」
 にしては、影も形も残さず、目の前から消え失せるというのも変な話しだった。
 軍ブロック入り口は、見張らしの良い広場になっており、隠れる場所もない。
 隠れられるといえば、軍管轄のブロックの中だが、それこそ中に入った途端、自動的に通報される。
 「ん?まあ、いっか」
 そう兵士は呟くと、退屈な警備の任務に戻るのだった。


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