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すべてが流れだす。
空気と呼ばれる窒素と酸素の混合物が。
そして、鋼鉄の塊。
有機物によってなる人と呼ばれる生物。
「な……」
驚愕の叫びは空気の損失とともに消え失せ。
すべてが虚空の宇宙へと投げ出される。
それは鋼鉄の塊でさえも例外でなかった。
悲鳴すらのこさず、その巨体は宙に舞い、闇の深淵へと投げ出される。
その行き先は、虚空の宇宙か?眼下の楽園ラグオルか?
どちらにしろ、助かるまい。
その道はふたつ。
そのまま宇宙の藻屑となるか。
ラグオルの重力にひかれ、燃え尽きるか。
……バイバイ不死身のアンドロイド。
心の中でそうつぶやき彼女は、外と内を塞ぐそのゲートをもとへともどした。
彼女はよろよろと、エアロックからころがりでた。
まったく生きた心地がしない。
いくらワイヤーを張っていたとはいえ、なみの神経でやるようなものじゃない。
彼女は心の内で静かに悪態をつく。
そしてさらにため息をつく。
「……なんてことかしら。壊れちゃったの?」
そう壊れていた。
壊れたもの、そうそれはシャトル。
まあ、あれだけ破壊活動をおこなったのだ、無事な方がおかしいのかも知れない。
いつのまにかけたたましく警報が鳴り響き。
非常をつげる赤ランプが明滅を繰り返す。
あの、娘の姿はもう見えない。
逃げたのか、死んだのか〜まあ、多分前者だろう〜、あの娘の姿はどこにもなかった。
「……こういうになんていうんだっけ?」
それは、骨折り損のくたびれ儲け。
今の彼女にふさわしい言葉だ。
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