11

 すべてが流れだす。
 空気と呼ばれる窒素と酸素の混合物が。
 そして、鋼鉄の塊。
 有機物によってなる人と呼ばれる生物。
 「な……」
 驚愕の叫びは空気の損失とともに消え失せ。
 すべてが虚空の宇宙へと投げ出される。
 それは鋼鉄の塊でさえも例外でなかった。
 悲鳴すらのこさず、その巨体は宙に舞い、闇の深淵へと投げ出される。
 その行き先は、虚空の宇宙か?眼下の楽園ラグオルか?
 どちらにしろ、助かるまい。
 その道はふたつ。
 そのまま宇宙の藻屑となるか。
 ラグオルの重力にひかれ、燃え尽きるか。
 ……バイバイ不死身のアンドロイド。
 心の中でそうつぶやき彼女は、外と内を塞ぐそのゲートをもとへともどした。
 
 彼女はよろよろと、エアロックからころがりでた。
 まったく生きた心地がしない。
 いくらワイヤーを張っていたとはいえ、なみの神経でやるようなものじゃない。
 彼女は心の内で静かに悪態をつく。
 そしてさらにため息をつく。
 「……なんてことかしら。壊れちゃったの?」
 そう壊れていた。
 壊れたもの、そうそれはシャトル。
 まあ、あれだけ破壊活動をおこなったのだ、無事な方がおかしいのかも知れない。
 いつのまにかけたたましく警報が鳴り響き。
 非常をつげる赤ランプが明滅を繰り返す。
 あの、娘の姿はもう見えない。
 逃げたのか、死んだのか〜まあ、多分前者だろう〜、あの娘の姿はどこにもなかった。
 「……こういうになんていうんだっけ?」
 それは、骨折り損のくたびれ儲け。
 今の彼女にふさわしい言葉だ。
 

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