第六話 夢
この世の全てを憎み続けて、はや幾星霜。いくつもの文明や世代が没興を繰り返し、その都度数え切れないほどの生命をこの手で殺めてきた。血にまみれたこの手、そして姿は最早人と呼べる物では無く、自分もおそらくはあの魔物共と何ら変わらない存在にまで墜ちきってしまっているのだろう。
「私は・・・少なくとも望んではいなかった」
少なくとも。
望んではいなかった。
あの日、全てが変わった日。そのときまでは。
全てが決定的に変わり果ててしまったあの日までは。
「何故、こんな夢を見せた・・・・・・」
「退け、ユイス!!」
狭苦しい土の洞窟の中。揉み合うように言い争う二人の男。
激高して怒りを露わにしている赤鋼の鎧の男と、それを冷淡な面もちで受け流す白銀の鎧の男。
そしてその周りを取り囲む十数名の騎士達。
「いいえ、駄目です。貴方には即刻地上へ戻って頂きます。この戦いはソニアの命運を賭けた一戦。私情を挟んだ男が全うできるような物では有りません」
「何だと−−−!!」
言いざま、剣の柄に手をかける赤鋼の男。
「貴様のような王家の小間使いに、一体何がわかるというのだ!!」
「隊長、貴方は一刻も早くその血の上がった頭を冷やす必要があるんですよ!!」
瞬間−−−
ぴう
風切り音。
ぱっと鮮血が舞った。
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