第三話 彼らの視線の先に
「どどどどどーなってんだジュドーこれわっ!!」
しゅたたたたた!! と忍者も真っ青な速さで森を駆け抜けながら、らせつが隣にいるジュドーへ向けて叫ぶ。
その後ろに迫り来る、数十体もの亡霊(レイス)の群れ。
「そんなのオレだって知りませんよ、休もうとした草むらがこいつらのたまり場だったなんて!!
だいたい地上にモンスターがいるなんて誰が思いますか!?」
半泣きのジュドー。
「あーもうっ、そんなのどうだっていいじゃないですか!!
どうするんです、ここから!?」
この面子の中では一番落ち着いているであろうリョウが叫ぶ。
「だいたい、どうして闘わないんですからせつさん!!」
それはもっともな質問だった。
「・・・・・・・・・・・」
らせつは答えない。
問われた瞬間、わずかだが顔色が曇ったように見えた。
「・・・? どうしたんです、らせつさん」
「・・・・・できないんだ」
「・・・・・は?」
「・・・・・よくわからないんだが・・・闘えないんだ。力が入らない」
「思えばあの時・・・私にもっと力があったなら、未来は変わっただろうか」
「・・・・・?」
ふいに立ち止まる男。
黒髪、黒目。清冽なせせらぎを模したような・・・そんな風貌の優男。
浮かぶ表情はきわめて少ないが、無表情というわけではなく・・・ただ単に表情の変動が少ないだけだった。
見た目から推測される年齢から考えれば、えらく老獪ともとれる。
「どした? フォム?」
・・・・・気のせいだったのか・・・?
風に語りかけられたような・・・そんな気がした。
ありえないことだが・・・。
「いや・・・なんでもない。さぁ、行こう億泰」
大陸の最果て、"ゾルゲ"。
かつて偉大な英雄を輩出し、その英雄に裏切られた街。
スラムと孤児院が溢れる、今はもう廃れてしまった街。
フォムと億泰は何かを求め、そこへ流れ着いていた。
「力の無さ故に、私は・・・ここにいる。
かつて英雄と祭り上げられた男が、いまでは魔物の軍団長だ。・・・・・・悪い冗談にしか聞こえんな・・・・・まったく」
第ニ話へ
第四話へ
メニューへ