第二話『レイラ』
俺が目覚めたのは
花花(はなばな)咲き乱れるエデンの園ではなく
綺麗に掃除された孤児院の一室だった。
・・・もっとも
孤児(みなしご)がエデンの園に逝ける訳は無いが。
「・・・生きる気も無いのに死ぬ事も出来ないのか、俺は」
「あら?うわごとで何度も『死にたくない』と言ってたわよ」
・・・森では気づかなかったが
かなり透き通った良い声が部屋に響く。
「・・・なっ?・・・!痛っ!!」
声の方に向こうと少しよじった俺の体に激痛が走った。
「・・・まだ動くのは無理よ
大体、普通の人ならとっくに死んでる怪我なのよ?」
彼女は苦しむ俺を呆れたような顔で見ながら言った。
(・・・『普通の人』なら、か。)
俺にはその言葉が重くのしかかる。
・・・が、彼女はそれに気付かず喋り続ける。
「まぁ、とにかく目覚めてよかったわ
あのまま死なれたらこっちの目覚めも悪くなるし」
「それは残念だったな」
彼女はそれを聞いて一瞬沈黙する。
そして・・・
「ふふふっ!そこまで言えればもう平気ね」
「当たり前さ、まだ死ねないからな」
彼女は本当に楽しそうに笑った。
何故かその時俺は、忘れて久しい『幸福』を感じていた。
「気に入ったわ、あたしはレイラ
レイラ=リンヴァース、よろしくね、坊や」
「坊やじゃない、フォールムだ」
俺の言葉を聞いて、途端に困った顔で考え込むレイラ。
「まぁ、しっかし・・・あたしの言うことじゃないけど
その可愛くない性格は変えた方が良いわよ」
からかう様なレイラの声。
「うるさい!」
・・・そこには
大声を出して再び激痛に襲われる俺の様子を見て
けらけら笑っているレイラがいた。
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