第三話『過去』


俺は孤児員の寝室にあるベッドの上で
天井の一点を見つめていた。
「なあ、レイラ・・・」
「さん、ぐらいつけなさいよ!」
「・・!ッ!!」
ベッドの傍らに置いてある椅子に座っているレイラが
俺の頭を容赦無い力で小突く。
「何をするんだ!?病人に!!」
「それだけ元気で病人はないでしょ?」
「ったく・・・・・・ところで、レイラ・・・」
言ったが遅し、レイラが再び手をあげて・・・
そのまま、あげた手を戻した。
「・・・まぁいいわ、それよりなに?」
「・・・死にたいと・・・思ったこと
 ・・・・・・あるかい?」
外で飛び回る小鳥のさえずりが、やけにはっきりと聞こえる。
レイラがその静寂を綺麗な声で掻き消した。
「ない・・・と言えば、嘘になるわね
 けど、たった一度しか無いわ」
レイラは苦虫を噛み潰したような顔で言った。
そして彼女の言葉は続く。
「仲間・・・そう、あたしは冒険者なんだけど
 元々、四人で旅をしていたのよ」
「・・・旅か」
「そう、そしてその旅の中で
 ある洞窟の調査を請け負ったのよ、そして・・・」
レイラはその話を苦しそうに話した、俺は後悔していた。
(聞かなければ・・・苦しまなかったのに)
「フォムは・・・死にたいと思ったことはあるの?」
レイラの言葉が俺の後悔を吹き消し
俺の心を怒りと悲しみと苦しみが混ざった物で侵した。
「俺は・・・俺は・・・」
それでも・・・何故か、俺はその全てを語っていた・・・。


翌日・・・
俺はやっと直った体を起こし、彼女を探す。
「あら、凄いわ!もう起きれるの!?」
孤児院の花畑の中で座り込んでいたレイラは
全身傷だらけながらも何とか立っている俺を見て驚く。
「レイラ・・・頼みがあるんだ」
「・・・頼み?」
レイラが立ち上がる、花畑とのバランスがとても綺麗だった。
「俺に・・・剣の扱いを教えてくれ」
そして、俺とレイラの物語が始まった。



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