『来訪』 第ニ話
「てめぇ、いつまで寝てやがんだぁぁぁっ!!! まもなく出航時刻だぞ! ここで降りるんじゃなかったのか!?」
怒鳴り声。地響きするような、馬鹿にでかい声だ。例えるなら雪山ゴリラが100匹並んで大合唱するような・・・とにかく喧しい声量。
「そんなに眠いんなら俺が目ぇ醒まさせてやるっ! さぁ、そのちっちゃな窓の前にオレが叩き落としやすいように立て!!」
びし! とらせつを指さし、残った右手で握り拳をつくる船長。その拳に縦横無尽に血管・・・だか筋なんだかわからないモノを浮き上がらせ、更に怒鳴ろうとして・・・
ばふ!
やおら飛んできた枕に口・・・というか顔を塞がれる。
投げたのは当然・・・
「ふざけんな、この海ゴリラ!! まだ冷てーんだぞ、水! 第一もう起きてんだろーが、見てわかんね−のか!」
さっきまでの良い気分はどこへやら、ぴきぴきと頬をひきつらせ、らせつが険悪に・・・残忍な笑みを浮かべている。
「このクソ海ゴリラ、いいかげんとっちめてもいいよなァ・・・?」
びく、と、らせつの連れ・・・セイアが震えたのがわかった。おそらく、こちらの表情を見たのだろう・・・視界の端に、青ざめた彼の顔が見える。
が、船長はそんなことは一切感じ無いらしい。図太いのか、それとも無神経なのか・・・ひょっとしたら両方かもしれないが。
「誰が海ゴリラだ! 船長をゴリラ呼ばわりするなっ!」
「うるせぇ、ゴリラ船長! てめぇなんざゴリラだ。海の上でウホウホいってろ野蛮人!」
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! もう許さねぇ!!!」
「来やがれ、決着をつけてやる!」
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