『来訪』 第三話


「必殺! 石@天驚拳ぇぇぇぇぇん!!!」

どかーーーん!

 らせつの怒号とともに放たれた膨大なエネルギー波が、あっというまに船長を呑み込み爆砕させる。圧倒的な質量と熱量を持った『気力』の奔流が、船長のいる場所で弾けるようにして破裂した。
 けたたましい爆音、そして爆風が吹き荒れる。安い造りの船室はその圧力に耐えきれず、内部から膨れあがるようにして粉砕された。足下と頭上・・・つまりは床と天井が、ぽっかりと抜け落ちている。

「ヘッ・・・!」

 満足そうに、鼻を鳴らすらせつ。
 階下でぴくぴくと痙攣する船長の姿を見下ろしながら、満足気に下船の支度を始めるのだった。




「・・・あ!」

と、唐突にらせつが声を上げる。

「メガトンナックル船に置いてきた」

 そういえばやけに身が軽いな、とは思っていたのだが・・・・・大事なモノをすっかり忘れていたようだった。

「ええ!? もう船は出ちゃいましたよ? どうするんですか」

「んー・・・ま、いいさ」

 淡泊にらせつが言う。

「そのうち取りに行けるだろ。その時でいいや」

「でも・・・大事な物だったんでしょう?」

「あのおっさんに預けてると思えば、たいしてひどいハナシじゃ無いだろ」

「・・・まぁ、それはそうかもしれませんけど」

「それより、早速冒険者登録しに行こうぜ。ジェイドって宝石がどんなのか、オレも知りたいしな」


<『来訪』完>



第二話へ
メニューへ