9、栄光に向かって走る


完璧な荒野に化した焼け野原の上で、らせつが口を開いた。

らせつ「いやあ、ずいぶんきれいになったなあ、、ここ」

U「きっぱりと爆撃跡って感じだね」

らせつ「まあ、なんとかなったんだし、いいじゃねえか」

U「まあ....ね」

そういってUはさっき引き抜いた剣を地面に投げた。

らせつ「?」

U「らせつ、ちょっとさがってて」

らせつが剣から離れる。Uも剣から距離をおく。
そして、魔法を放つ。

U「憎しみより出でるヴァリトラの凍嵐を...コラン」

ヒュォオオオン カチン

らせつ「!?」

U「やっぱ、所有者がいないとジェイドも発動しないのか」

そういいながら、剣のジェイドを踏み砕く。
分子運動の少なくなっているジェイドはパキッと音を立てて砕け散った。

らせつ「おいおい!なにやってんだよ!魔法を全て封じる
ジェイドなんか滅多に見つかんねえぞ!」

U「いいんだよ、こんなもんがあったら、魔法使いであるわての能力が
意味なくなるし、なによりこの世界のパワーバランスが崩れてしまう」
 
大きすぎる力は修正されねばならない。なぜならその力はその世界の
秩序を乱すからだ。
友との約束を守るためにも、ここでこのジェイドを残しておいてはならない。
そして、それは人間でも例外ではない。
このらせつという男、力をもちすぎである。
...もし、イレギュラーになるようなら....

らせつ「そうか、まあいいや、武器についたジェイドは取りはずせんし
剣なんか俺達、つかえねえしな」
   「?どうした?怖い顔して...?」

あっけらかんとらせつが尋ねてくる。
それにUが事無げに答える。

U「いや、なんでもないさ、しかし、本当に助かったよ、
らせつのおかげで死なずにすんだ」

らせつ「へっ、よくいうぜ、お前、あの時なんか奥の手だすところ
だったんだろ?」

U「!」

Uの顔色が険しくなる。まさか...みられていた..!?

らせつ「俺はソルニアってところで白竜亭っていう酒場を開いてんだ、
よかったらきてくれ」

U「あ..ああ、きっと行くよ」

らせつ「じゃーなー」

後ろ向きのまま手を振って、らせつが去っていく。
大きな背中がついに見えなくなったとき。
Uの顔に笑みが浮かんだ。

U「らせつ...か。あの技を見て、生きていた人はあの人が
初めてだなあ...」

空は日が暮れて銅(あかがね)色のグラデーションを描いていた...



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