『再出発(洞窟の解禁日)』


ヤマカガシには時間がなかった。
叔父貴と連絡のとれなくなったいま
決断しなければならなかった。
洞窟の解禁日が迫っていた。
 
『エイティー族(A・T族)』を
叔父貴とふたりで皆殺しにしてから
無茶苦茶に暴れ散らしてぶっ殺して
母親の仇をとってから、出発するつもりだった。
    
「ピラニア野郎たちは、後回しや
 洞窟のほうが先じゃ」
 
ヤマカガシは
いきりたってるふりをしながら
尻の砂を振り払って立ち上がり
ヘロインをなめた。ついでにハシシもなめまくった。
わざとらしくふらふらしながら
一人乗りのボートに近づいていった。
ボートを漕ぎながら
飛んでいるカモメにむかって
「えろうすんまへん」と絶叫して
無表情で海原へ漕ぎ出していった。 
       外面は凶暴そうな顔をしているが
内面はメスの羊であり
不人気の虫や動物
忌み嫌われる虫や動物と
渾然一体になったつもりで
必死にボートを漕いだ。
ほんの少しだけ泣いた。
嗚咽しながら笑った。
ボートはちっとも進まなかった。



上陸
    
ボートからおりるとき、オールでボートをぶっ叩いた。
オールは砕け散った。
ヤマカガシは遂に上陸したのだった。



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