『R指定』


散策を終えて
砂浜に戻ってきた。
ごつごつした岩があるところに
移動して
ものおもいに耽っている。
ときおり
薄く微笑んだり、苦笑いしていた。
 
「くそっー
 叔父貴の野郎、ミスりやがったな、、」
 
魚雷を積んだ
潜水艦が来るはずだった。



叔父貴
 
魚雷を積んだ潜水艦をパクって
狂気の蛮族『エイティー族』の乗った潜水艦を
こっちから迎撃する手筈だった。
 
「ちきしょー
 叔父貴のやつ、土壇場でちびりやがって
 ちきしょー」
 
憎しみの感情を滅多なことでは
表にあらわさないヤマカガシが
口のなかのマウスピースを強く噛んでいた。
叔父貴には
マラ式キックボクシングを叩きこまれていた。



客死
 
ヤマカガシの母さんは
マラ国のミスコンテストのグランプリにも
匹敵するほど、もしくはそれ以上に美人だった。
弟がひとりいた。
 
「オフクロがくたばって、もう何年になるかなー
 くそっ、、
 やっぱりゆるせねえよ、、あの野蛮人共め、、
 皆殺しにしてやるぜ、、」
 
ヤマカガシの母さんは、リップ国の
神秘的な女神像『ルナティックアラート』を
見物するために
マラ国から飛行機で、観光しにいって
客死した。
   
野蛮人のくせして
妙に頭のきれるところがある
『エイティー族』は
リップ国とも関係を持っていた。



祖国
 
ヤマカガシの出身地マラの
人々の特徴は
陰気で誰ともコミュニケーションをとらず
誰とも視線をあわせようとはしない
ひとが多かった。
そんななかでも
一部の人間は、自覚してやっていたのかは
わからないが、陽気だった。
ヤマカガシの母さんがそうだった。
派手に笑うことこそやらなかったが
およそ他のことには、なんにでも手をだした。
 
「わたしは、淫乱なのよ
 今夜も乱れまくってやるから」
 
そう言っては家を飛び出す。
すらっとした足で色白だった。
そんな毎日のなかで
妊娠した。
父親は誰なのかわからなかったが
産んだ。
そのときの子供がヤマカガシだった。
     
「この子は混血ね」
助産婦がそう言った。



百戦錬磨(R指定)
 
経験豊富な『エイティー族』にとって
目をつけた観光客を拉致することは、訳なかった。
ヤマカガシの母さんは
視姦されて、その気になってしまい
捕らえられた。
ピラニアを崇拝する男たちの殺しかたは
残酷だった。
集団で蹂躙した挙げ句
喰いちぎった。
 
地図にも載っていない町で
ヤマカガシの母さんは、喰いころされていた。
 
祖国には自分の子供と弟を残して
母であり姉だった人間は
命乞いをすることもなく
血と肉と骨だけになった。
 
「コンクリートを抱かせられて
 海に沈められるより、ましだわ」
 
全裸の状態でも虚勢をはっていた。
一滴の涙もこぼさずに絶命した。



R指定

 
海辺の小屋で
血みどろの死体が発見されていた。
辺り一面に野次馬がいて
警官と小突きあっている。
毛むくじゃらの男の死体は
死後何日か経過していた。
 
やがて
単なる小突きあいだったのが
真剣味を帯びはじめた。
野次馬たちが死体をみて
興奮してしまっていた。
なかには、ぶるぶる震えているものもいた。
 
「これは、俺んだ
 俺がみつけたんだ」
 
「やめろ」
 
閑散としていた海辺の町は
死体を奪いあうことに
熱中した。
ひとりの男が懐から
ナイフを取り出して
闇雲に振り回している。
危なかった。
 
発見された死体は
ヤマカガシの叔父さんだった。



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