『前の晩(出発編)』


ヤマカガシはその頃
シックスティ諸島某所の薄暗い室内のなかで
ひっきりなしに鞭でブッ叩かれて
喜悦の声を漏らしていた。
  
「や、やめて、、
 ほ、ほんとに堪忍しておくれよ、、
 い、痛いッ
 あっあっあっ、あああ」
 
そのまま、あらゆる責め苦をうけたヤマカガシは
やけに大人びた表情で
ねぇ、いくらなの?と言って
料金を払った。
  
店の外に出たヤマカガシは空気を吸い込み
軽く伸びをしながら
たまんねぇなと呟き、背中をふるわして
にやにや思いだし笑いをしている。
 
ソルニアの噂は、もう知っていた。
ヤマカガシは明日、船に乗る。
夜なのに暖かかった。



ユーナギ港(出発編)
 
シックスティ諸島のユーナギ港から
ソルニア行きの船がでる。
昼まで時間があるので、ヤマカガシは
うどんを食べていた。
 
「潔癖幻想は捨てようよー」
 
ヤマカガシは、そう怒鳴っているのだが
うどん屋の主人は、まったく取り合わずに
他の客の注文に応じていた。
しばらくして店を出た。
 
ヤマカガシは、出身地マラの
ブルーの国旗を腕に巻き付け、滅茶苦茶に
手刀を斬っていた。
見送りは、誰もいなかった。
スタンドにボールを投げ入れる真似をしながら
小走りに、船に乗り込んだのだが
その船は、違う船だった。
 
ソルニア行きの船は
屋形船に少し似ていた。
そうして、ヤマカガシは
屋形船のような船『月面丸』に乗り込んでいった。

   
 
-出発編・完-



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