『魔法』


「難儀なモンだな 魔法が使えないってのも、、」
あちこち負傷しつつも宿に戻った億泰はベッドに
ねっころがり、皮製のグローブをしている手、右手を掲げて
眺めながらボヤいた。

彼は魔法を使わない。

と言うより使えない。
魔法を使うための精神集中ができないのだ。

彼の生まれは遥か東国にあり、
そこでは魔法の類は一般的では無いため
使う者は少なく、風来坊の億泰にとっては
魔法を扱う修練などする暇があれば剣を振り回していた。
血筋から見ても億泰に魔法の素質があるとは
到底考えられない。

この日億泰は、ちょっとした依頼で地上に出てきたモンスターの
退治してきたのだが、あまりの数に若干負傷した。

この世界でスピルさえも使えない事は致命的かも知れないが
億泰は今まで全て道具によって解決していた。
そして彼の装備も耐魔性のジェイドが付けられている物が
ほとんどであった。
どれもこの町に来てから買い揃えた物ばかりで中古品、
ジェイドの効果もお世辞にも強力とは言えない、
が 億泰にしては『考えた装備』と言えるだろう。

「ま 寝てりゃ治るだろ」
右手のを2・3度握り、グローブをギチギチいわせると
億泰は寝た。
彼が右手だけにグローブをするのは「なんかスースーするから」
らしい。とある武器(アームズ)の装備のしすぎが原因である。



洞窟の解禁日まで あと5日



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