『乳』
土竜の雄叫び!
それが合図となったかのように億泰が走る!
刀は下段に構えたままだ。
モグラの「爪」の射程範囲に入る!
ブォンッ!
空を凪ぐ音が聞こえた。
走ったまま、とっさに刀の柄だけ肩口まで上げ衝撃に備える。
剣先は下を向いたままだ。
ガギャリ!
神経に触る音と同時にすさまじい衝撃が億泰の
両腕を襲う。
「ん!! ナローーーーーッ!!」
何とか初撃を耐え、土竜の堅い鎧で覆われた
胸元へと滑り込む。
全身が鎧に覆われているとはいえ、狙うべき所はある。
そう。 『継ぎ目』だ。
関節が存在する以上必ず鎧には継ぎ目がある。
土竜といえどその例には漏れず、継ぎ目はある。
そして億泰はそれを狙った。
ドグッ!
「ぐ、、、、ふ、、、」
億泰の剛刀が継ぎ目に届く直前、
土竜の膝が億泰を突き上げ、
億泰の体はゴムマリのごとく跳ね上げられた。
「マジ、、、、かよ、、、、」
着地には成功したが、苦悶の表情で
土竜のした行為に驚愕する。
この土竜、自分の弱点というモノを知っている。
そしてそれをカバーするための方法も知っている。
「強い」
いままで何人の冒険者を喰らってきたが知らないが
ただの動物にここまでの知能があるとは
コイツの餌食になったヤツラも
最後まで信じたくなかっただろう。
ただのモンスターが自分の弱点を知り、
それをカバーすべく様々な手段を用いて襲ってくる。
その事実を目の当たりにした億泰は、、、
ガリガリと頭を掻きボヤいていた
「チッ こんな事ならあの時謝礼と称して
チチでも触っとくんだったぜ、、、」
先日出会った名も知らぬ女剣士と少女を思い起こす。
緊張感ゼロ
「しっかしあの剣士の方かなりデカかったなぁ、、、」
腕を組み、遠い目をしながらしみじみと言う。
ウゴァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
そんな億泰を察してか 土竜がさっきよりも増して
巨大な叫び声をあげる。洞窟内がびりびりと震えた。
「うお!?ヤベ 忘れてた!」
余裕のあるヤツである。
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