『追跡』
「ま こんなとこか、、、」
手に入れたばかりのジェイドを道具袋にしまい、
そのついでにタバコをとり出し火をつける。
「っかし シケた洞窟だな こりゃ、、、」
くわえタバコのまま、ここでの戦利品を確認する。
億泰の道具袋は自分の弱点のフォローのため、
大抵パワーデューで埋まっている。
今回も例に洩れず、袋にはパワーデューが大半で
それに紛れてジェイドが3・4個あるだけである。
「さて、とっとと出て一献やって帰るか」
最近になって億泰はお気に入りの酒を見つけた。
サムライ・ロックと言う、彼の故郷の酒を使った
カクテルで、億泰にとっては懐かしい味のする酒だった。
因みにこの「一献」と言う言葉は彼の生まれた国の言葉で
「一杯」の意味である。特にに酒を飲む時によく使う。
使用例・酒を勧める時「ホレ 一献どうだ」
彼はもう国を発って随分経ち、言葉使いもほとんど変わって
しまったが、時々こうして何気なく使う事があった。
タバコの吸殻をしまって、視線を前に戻すと
奥の通路で何かが通って行くのが見えた。
見えたといっても完全に通りすぎる直前だったため
何が通ったのかは解らなかった。
「人か? いやまさかな。向こうからこっちは丸見え
のハズだ、人であるなら声ぐらいは、、」
そう言いかけて億泰はハッとした。
「こりゃぁ ひょっとして、、、」
どこぞの悪役がワルだくみする時のような笑みを浮かべ
「何か」が通って行った通路へ向かう。
もはや、さきほど通った行ったモノの影も形も無かったが
そんな事は気にせず後を追った。
追うといっても走ったりせず、歩いて後を追う億泰。
もはや完全に見失っていたが、
彼は今、さっきの「何か」に自分で結論を出して、
それに賭けていた。
薄暗い通路をただひたすら歩く、ヒカリゴケのおかげで
ここら一帯の洞窟には、たいまつ等の照明具の必要もなく
今ここに存在している「火」はタバコの火くらいだ。
そして億泰が5本目のタバコに火をつけた時、
その通路の終点が億泰の眼前にあった。
行き止まりだ。
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