7.Reverse bless
「…ん……」
ふと彼が目を開けると、そこには見知った顔があった。30半ばほどの、無骨だが端正で、粗野だが理知的な…そんな感じの男の顔。
「起こしちまったか……悪ぃ」
男は、地面に寝ころぶこちらの頭のそばに座って、苦笑いしながら頭を掻いた。笑みを浮かべる顔は何故か汗まみれで、ハンター用のボディースーツも蒸れたような光沢になっている。
「どう…したんですか……汗……」
彼が気になって訊ねてみると、男は苦笑をさらに深めて、
「ちょっと、な」
それだけを発した。
気にはなったが、彼はそれ以上言及はしないほうが良いと思い、口を開くのをやめた。
「それよか、ほれ…水だ。飲むだろ?」
男が革袋を差し出してくる。
彼は力無い身体で精一杯の笑みを浮かべ、ありがとう、とかぼそく声を出した。そして口を開け、ゆっくりと流し込まれる水を少しずつ喉に入れていく。
「なによりもまず休息だ。モノメイトは幾つかあるが、ここまで身体が痛んでると連続投与はかえって身体に悪い。自然治癒を正常に働かせる為にも1本飲んだら1時間は間隔を開けろ。わかったな?」
頷く。
「いよし。じゃあ水も置いてく。あんまり飲み過ぎると胃に負担がかかるから調節して飲め。俺はちっとやる事があるからここを離れる。それまできっちり【死んだフリ】しとけよ。奴等は死体には手を出さないみたいだからな」
頷く。
「あとは傷が治り次第俺に連絡をよこせ。お前のハンドヘルドコンピュータに俺の通信用IDナンバーを入力しておいた。連絡を受けたら俺がお前を迎えにいく。それまで……死ぬな」
頷く。
「で……今更なんだが俺の名前を教えとく。ブラック・H・ハートだ。君は?」
「クレイ=リザードです」
「オーケイ。じゃあこれから共同戦線だ。よろしくな、クレイ」
「痛ってぇ………」
芝生のような草地に座り込み、らせつが頭をさすっている。彼の後頭部に大きなコブができていた。
「いきなし刀の鞘で殴るか?」
半目になって、向かいにちょこんと座るシルヴィに訊ねる。
「いえあの…あのひとが銃を構えるのが見えたもので、咄嗟に…。その方が楽に吹き飛んでくれるかなぁ、なんて」
「……はたき倒してもらったおかげで銃弾はかわせたから、この場合は例を言うべきなんだろーがな…。森ん中全力疾走した挙げ句気を失う程ぶったたかれて奴を見失って、なんつうか散々だよな………」
「だ、だからさっきから謝ってるじゃないですかあ……」
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