4.Talking about...
「あの爆発が作為的なものなのは間違いない」
老人は愉しげに顎髭をさすった。
「そしてそれが全てに作用し、全てを狂わせた。爆発ははじまりを告げる鐘音にすぎん」
「あなたたち第13調査隊がこちらに到着したと同時に奴等は現れたわ。転送機が打ち込まれてた広場を包囲するほど大勢で。それに気付いた私達が物珍しさに近寄ろうとしたのは……わかるでしょ、だいたい」
シルヴィは苦笑した。
無理矢理作った暗い笑み。
「顔に手を触れようとした人が、のばした手を二の腕まで呑み込まれて引きちぎられた。唖然としてた近くの人が何人もまとめて吹き飛ばされて……咄嗟に後ろに尻餅をついて。掌に濡れた感触に気が付いて後ろを振り返ったら、もうみんな……殺されてて」
「……泣いてるのか?」
声が震えた気がして、らせつは俯いているシルヴィに問いかけた。
「冗談でしょ? ……怒ってるのよ!!」
「……うお」
突然の剣幕に寝転がったまま後ずさる。
「何なのよ、報告書にも事前調査資料にもバートルは【温厚な草食動物】って書いてあったのよ!? なのにそれがどうして人を襲うの! どうして人を食べるの!! 書面に偽りがあるのも程があるわ!!」
「い、いやしかし……」
「パイオニア1の研究員は絵本の世界でも覗いてきたの? ライオンと猫を見間違える? お陰で皆殺されちゃったじゃないのよ!」
「あ、あのー……」
「……まぁ良いわ」
そこで彼女は拳を握った。
「奴等には私がしかるべき処置をくれてやったから」
「………処置…?」
らせつが訊ねる。
シルヴィはきらりと双眸を輝かせ、握った拳を胸まで上げた。そして言う。
「私刑よ」
「おおいっ?!」
……らせつは追っ手が一匹しか来ない理由をようやく理解した。
「いやいや、そんなに深刻になる事は無いですぞ」
今にもひび割れそうな顔のタイレルへ慰みをかける老人。
「既に一人、儂の腹心が地上へ降りております。これまた頼りになる男でしてな」
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