3.A boy meets a girl
「全滅…か…」
総督タイレルは震える声で呟いた。誰ともなしに。
ざわめき騒然とする管制室の中、それを聞きとがめる人間などいはしない。
「諦めるのはまだ早いですぞ」
うなだれたタイレルの視界に、見覚えのない靴が見えた。
「……ねぇ、生きてる……?」
不意に聞こえてきた言葉。眼を開けると…
「誰だ……あんた」
眼を開けると、大の字に寝転がっている自分の傍らに人が立っている。
銀色の髪の女。年齢は二十歳そこそこ。黒い革のジャケットとハーフパンツ姿で、腰には…「日本刀」。
「武士……?」
気力を振り絞って、苦笑混じりに冗談を吐く。
それを聞くと女は笑った。
「大丈夫みたいね。身体のほうは満身創痍みたいだけど」
女は腰のサックからモノメイトを取り出し、そばにかがんでらせつに含ませた。こちらが遠慮するとでも思ったのか…なかば無理矢理、ねじ込むようにアンシプルが口に押し込まれる。
「私はシルヴィって言うの。あなたは?」
(………)
容器をくわえたまま、抗議の視線を女…シルヴィに向ける。
「あ」
はっと気付くシルヴィ。
「ゴメンゴメン。それじゃ、私から話そっか」
と、表情を重く翳らせ、
「今の…ラグオルの現状をね」
「あなた…いや、あなたがたはまさか、あの……!」
「総督」
たしなめるように声がかかる。
「我々が何者かを知っているのなら、その名に課せられた重みも知っていよう。出し抜けに口に出せるほど軽くはないぞ」
……………。
「ま、とりあえずだ。わしらの『推論』を聞いてもらえんかな、総督?」
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