「まずは俺から説明しましょうか~~♪」
らせつは自分が手柄をたてたことですっかり上機嫌だった。
「ああ、そうしてくれ・・・何故此処に?」
「愛の力♪」
狗愛の問いに素早く答えるらせつ。
そのらせつに間髪入れずに蹴りを入れる狗愛。
・・・相変わらずだなぁ。
「わ・・・分かってるって!」
「今度ふざけたらこの世に留まれないと思え・・・」
「おお・・・怖い怖い・・・」
いや・・・今の狗愛ならやりかねんと思うぞ。
まだ目の色が戻ってないしなぁ・・・。
「オレは・・・実はアケミサマに
アイヴィスって子がさらわれたって聞いたんでね。
それで犯人の恰好やら何やらを聞いてみりゃ
今追ってる奴等と同じだってんいうんで、
此処に来てみたらこうなった、つうワケさ」
「そうか・・・しかし、本当に良いタイミングだったな・・・」
狗愛が感心して頷くと、しかしらせつは手をぱたぱたと振って言った。
「いやぁ・・・この洞窟には結構前に入ったんだけど・・・
中が複雑で何度も道に迷っちまってさ・・・」
・・・はいっ?
「複雑って・・・一本道だったじゃないか」
「それが・・・盗掘団のアジトだから、
ちょっと横道に宝か何か置いてあるかな~と・・・♪」
「お前わぁぁぁ!!」
狗愛本日二度目の蹴りがらせつに決まった。
らせつへの蹴りは刀の振りより数段早いかも・・・。
「痛ってぇ・・・で、でも、それで助かったんだし・・・」
「ふむ・・・それもそうだが・・・・・・・・・やはり蹴る!」
狗愛三度目の蹴りがらせつに決まった・・・。
「このっこのっこのっ!」
「ひぃぃっ!ぎゃあ~!」
良く分からない二つの声が空洞内にこだまする・・・。
「で・・・今度は狗愛に聞きたいんだが・・・」
私の声でようやく狗愛のらせつへのお仕置き(?)が中断された。
「な・・・なんだ?」
狗愛は息を切らせながら此方等を向く。
何をしてるんだか・・・。
「人を殺した事があるって・・・本当か?」
「・・・・・・・・・」
狗愛は黙って私を見つめる。
そのまま二人とも黙り込んでしばらく経った時。
「・・・ああ、一度だけ・・・剣の試合中に・・・・・・な」
私から目を反らしてボソッと呟いた。
「そうか・・・」
「今度は・・・」
狗愛は私に視線を戻して言った。
「お前の事も教えてくれ」
「・・・・・・ああ」
私は過去の話をし始めた。
「へぇ・・・ケヴィンサマにもそんな過去があったのかぁ・・・」
らせつが真剣半分、興味半分といった顔で言う。
「許されざる罪・・・かな」
私は言って俯いた。
しかし、言葉だけは続けた。
「でも・・・
例え取り返しがつかなくても、それを忘れなければ・・・
取り戻せるはずだ」
「そう・・・だな・・・」
狗愛も神妙な面持ちで呟く。
「もし取り戻せないなら・・・
私が此処にいるはずが無いからね・・・はは」
「確かに、な・・・ふふ」
私と狗愛はほぼ同時に笑い出した。
とりあえず仕事は達成した私達は洞窟の外に居た。
「さて、お姫さんを連れて帰らないとね」
「ふふ・・・」
「ククク・・・」
私はニヤニヤしている二人を敢えて無視してアイヴィスを抱えた。
・・・どうやら例の一件はらせつの耳にも入っているらしい。
「俺達はもう少しアレクについて調べてみる」
「ああ・・・頼む」
私にはそう言うしか出来なかった。
きっと次は・・・。
次はどちらかが死ぬまで戦わなければならないだろう事を予感しつつ
私はアイヴィスを抱えてチューリピオへと歩き出した。
[闇、負いし者達]終
続く