『お仲間募集中』 第ニ話
「ん・・・アリャ、なんかマズかったかな?」
なにやららせつと若者の表情が思わしくなかったので、億泰はちと気になって、らせつに尋ねてみた。
「え?あ、い、いや、なんでもないよ億泰サン。気にしなくてオケ! つか気にしちゃイヤン」
ぱたぱた手を振って抗弁するらせつの様子に、全く疑問を感じなかったワケではなかったが・・・
まぁ、いいか、と一人胸中で納得して、億泰はひとまず落ち着くことにした。
「おお、そちらの方も武闘家で?」
億泰が尋ねると、若者は僅かにはにかみながら、
「はい。まだ若輩ですが」
「気功波とか、撃てます?」
(ソレが重要なんかい)
らせつが突っ込む。
「まぁ・・・なんとか」
「おぉぉぅ♪」
ぱぁぁ、と、億泰の表情が明るくなる。
「スバラシィ・・・武闘家3人組がダンジョン深奥で跳梁跋扈。
飛び交う気功波、唸る剛拳。熱き魂の激突・・・。ああ、良いですなぁ・・・ポワァ〜〜ン(妄想開始)」
早速妄想モードに突入する億泰。
彼の頭の中では、万の軍勢と争う3人の誇り高き武闘家の壮大な叙事詩が、こと細かに描かれつつあった。
「まぁ、3人までなら、な」
ぼそ、と、らせつが漏らす。
妄想全開の億泰には、全く届いていない。
「そうですね。3人武闘家ってのも、結構面白いかもしれませんし」
「ん・・・そうかもな」
願わくば・・・
(次に来るのは、できれば魔法使いのが良いなー。ね? カミサマ?)
次第に大きくなる転移の光を眺めながら、らせつはぼんやりとそんなことを考えていた。
<『お仲間募集中』完>
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