一人の女の子が横になっている男にやさしく話しかける
「大丈夫? こんなとこで寝てちゃ風邪ひくよ」
男は起きあがりお返しかのように優しく微笑み そして話しかけた
「やぁー ニーナいいのかい? こんな時間に外に出てきて」
「えー、大丈夫・・・親はもう寝たわ
それにもう15才よ これくらいの時間大丈夫よ」
二人は笑いながらキレイな星空の真下にある
小さな丘の上で 横にならんで寝そべった
「キレイな星空だ・・・オレはこの場所が好きだよ・・・」
「そうね・・・いつも夜はココにいるもんね・・・私もここが気にいってるよ」
二人は恋仲だった・・・しばらく何気ない話しが続く
静かで真っ暗な夜の中、二人のいる小さな丘は
月と満天な星の輝きでほんのり明るく照らし出されているようだった
数刻の時が過ぎ、朝が近づき始めたころ 二人はみつめあい
そして、キスをしてお別れをつげた・・・
ニーナと呼ばれる女の子は急いだ様子で家へと帰り
残された男は しばらく丘にすわり何かを考え
腰につけていた剣をとり もうすぐなくなる星空に向かって剣を振りだした
そして、小さな声でボソボソとしゃべりだした
「オレはこの村では一番強い・・・親のいないオレは強くなるしかなかった
だが・・・それでも彼女の両親は オレのことを認めてくれない
・・・・親がいないということ? いや、オレの両親が人殺しだから?」
男は・・・色々な感情を交差させながら 丘の上から大きく叫びわめいた
「どうして・・・どうしてダメなんだーーー!オレに親なんかかんけーねー!
オレはオレ自身なんだァァァァーーーーーーーーーー!!!!」
そう叫び男は自分の家・・・小屋にゆっくりと重い足取りで戻り 眠りについた・・・
『絶望』
男はニーナと呼ばれていた女の子の家の前まで来ていた
何度もここを訪れては追い返されている
しかし、今日こそ認めてもらおうと心に決めていた
心のどこかでは、もうすでに駄目だということを悟っていたが・・・
そして、男は家の扉を少しあらっぽく叩いたのだった・・・・・
扉は数秒で開き、ニーナの父バッカートが顔を出した
「また君か・・・ニーナと付き合うのはやめてくれないか?」
男を見るなり厳しい形相になり、なかば疲れた感じになった
「バッカートさん・・・何度もいいましたがニーナと付き合いたいんです
なぜ、そこまでオレと付き合わせたくないんですか?」
「何度も言ったが、たしかに君は強く この辺では無敵だろう・・・
しかし、ニーナを君のような 親のいない・・・それに・・・まあそれはいいが
とにかく帰ってくれ・・・こういうとこを村のものに見られたくないのだよ」
バッカートはいつもとかわらぬ事を言ってきた
たいがいはここで「わるいが帰ってくれ」と もうひと押しされ
仕方なく帰っていたが、今日の男はさらに言い返した
「どうして・・・どうして親がいないだけで・・・そんなのひど過ぎますよ
オレはオレ自身なんです この村が誰かに襲われても守る事だって・・・
やっぱり・・・・やっぱり・・・・・オレの親が人殺しだったからですか?」
男にとって 嵐の前の静けさのような数秒の時・・・
バッカートがしばらく沈黙した そして嵐がやって来た
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういい早く帰れ!!
君はまだ16歳だぞ、ガキがなまいきいって15歳の娘と付き合うなんて
その時点でおかしいのだよ、そんなこともわからないのか?
亡き親の事を子供にまでいいたくないが お前の親は人殺しだ!!
そのことでお前は村の者すべてに嫌われている事にもう気づいているだろう?」
たしかに・・・今までずっと村の者はみなジュドーに冷たかった・・・それでも
男はそれを理解しがんばってきた、だが・・・バッカートはさらに続けた
「そんな奴にうちの娘を付き合わせるなんて、できるわけがないのだよ
みなが言っているぞ、お前なんて村から早く出て言ってほしいとな
・・・・・わかったらかえれ・・・・お前はこの村では確実に幸せにはなれない
もし娘に内緒で村を出て行くなら金をやるから、その時にうちに来い!
それ以外では もうこの家に近づくな!!わかったかっ!!!」
扉をおもいっきし強くしめられ・・・男はしばし呆然としていた
しかし、なかばこうなることに気がついていた
そして一つの事を決断したのだった 空には黒雲が広がっていた
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