『そこに、明日がある・・・』


 それは、初夏というにはまだ早い季節だった。
 当然夜ともなれば、かなり冷え込む。
 特に今日は寒いようだ。
 こんな日に夜の歩哨の仕事がまわってこなかったことを、青年は神に感謝しつつ鼻歌交じりで、要塞ないを散歩していた。
 酒で火照った体に夜風は気持ちいい。
 酒場では、看板娘のメリッサをくどき大いに騒ぎ、そして絡んできた傭兵を叩きのめし、大いに暴れた。
 まあ、そのせいでメリッサには逃げられたが、青年はまるで気にしたなかった。
 
 ふと、目の端にちょろちょろと、動くものがとまる。
 ・・・・・・・?
 青年の目に狂いがなければ、それは年若い少女に見えた。
 12〜14くらいか?
 見上げれば月は頂点に達し、深夜になろうとしている。
 若い娘がうろつくような時間じゃない。
 それ以前にここは、国境線を守る砦の一つ。
 場違いもはなはだしい。
 「君、なにやっているんだ??」
 建物の隅で、何やらごそごそしている少女に、青年は声をかける。
 「ん?爆弾仕掛けているの」
 少女はそういって、いかにもな包を残し、青年の前を通り過ぎる。
 「へ・・・・・???」
 てとてとと、なんだか拙い歩きかたで、去ってゆく少女の姿を目でおいながら、ふとよ〜く考えてみる。
 「・・・・・爆弾?????」
 そう、爆弾。
 それは爆発するもの。
 「ちょ〜っとまてい」
 その瞬間、赤い光が背後で生まれる。
 爆発したのだ。



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